大判例

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大阪高等裁判所 昭和26年(ネ)524号 判決

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対してなした昭和二十二年九月八日附書面による通知に係る財産税課税価格更正及び昭和二十四年二月二十五日附書面による通知に係る財産税課税価格の再更正を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張は、控訴人の方で、控訴人の株式会社三和銀行に対する債務は二十万円でなく、二十五万円である。控訴人が被控訴人の昭和二十二年九月八日附課税価格更正通知を同月十日受け取つたことはこれを認める。仮に控訴人が合資会社日東歯機製作所に対する債権を放棄したことがなかつたとしても、右債権は回収不能で無価値のものであるから、財産の価格に算入すべきものでないと述べ、被控訴人の方で、課税価格更正に対する審査の請求は書面をもつて提出すべきもので、口頭による審査の請求が不適法であることは、財産税法、同施行細則において「事由を具し」「税務署長を経由し」等の用語を用いていることから推知できるばかりでなく口頭による審査の請求を認めるときは、責任の所在の明確を欠き事務の混乱を生ずる恐れがあり、又財産税法、同施行規則、同施行細則に特別の定めのない限り、訴願法第五条の適用があることによつて明らかであると述べた外、いずれも原判決事実記載のとおりであるから、これを引用する。

(各証拠省略)

三、理  由

控訴人が昭和二十二年二月十五日被控訴人に対し財産税法に基き財産価格を六十六万九千五百十一円、債務の金額を二十八万二千円、課税価格を三十七万七千五百十一円として申告書を提出したこと、被控訴人が課税価格を更正し同年九月八日附書面を以てその旨を控訴人に通知したこと及び被控訴人がその後更に課税価格を再更正し昭和二十四年二月二十五日附書面を以てその旨控訴人に通知したことは当事者間に争がない。

まず、右昭和二十二年九月八日附課税価格の更正の取消を求める訴が適法かどうかを考えてみよう。

政府は課税価格の更正後その更正した課税価格について脱漏あることを発見したときは調査により課税価格を更正することができるものであつて、(財産税法第四六条第五項)再びなされた課税価格の更正によつて当初なされた更正は当然消滅に帰したものと解しなければならない。何故ならば再更正は当初の更正をそのままとして脱漏した部分だけを追加するものでなく、再調査により判明した結果に基いて課税価格を決定したものだからである。そうすると昭和二十二年九月八日附書面で通知せられた課税価格の更正は、昭和二十四年二月二十五日附書面で通知せられた再更正によつて当然消滅に帰したものであるから、前示更正の取消を求める訴はその対象を欠くもので不適法として却下せられなければならない。従つてこの訴が法定の期間内に提起せられたものかどうかの争点について判断をする必要はない。

次に右昭和二十四年二月二十五日附課税価格の再更正の取消を求める訴について判断する。成立に争のない乙第三号証、第四号証の一、二によると、右再更正せられた課税価格九十九万四千三百七十八円は、財産価格百三万千三百七十八円から債務金額三万二千円と戦災者引揚者控除五千円とを控除したものであり、右財産価格には控訴人の合資会社日東歯機製作所に対する貸金六十二万八千三百八十五円五十銭を三十六万二千八百円と評価して算入せられてあり、右債務金額には控訴人の株式会社三和銀行に対する債務二十五万円が含まれていないことを認めることができる。

控訴人は右合資会社に対する六十二万八千三百八十五円五十銭の債権を財産税法公布に際して全部放棄したと主張するけれども、これを認めるに足りる証拠はなく、かえつて控訴人本人の当審における尋問の結果によればこのような事実のなかつたことを認定できる。

控訴人は右債権は回収不能で無価値のものであると主張するけれども、控訴人本人の原審及び当審における尋問の結果中右同旨の部分は信用できず、その他これを確認するに足りる証拠はない。かえつて成立に争のない乙第二号証、原審証人池田作衛の証言によりその成立の認められる乙第三号証、第三者の作成に係り真正に成立したものと認められる甲第一号証、原審及び当審証人池田作衛、原審証人木田茂行の各証言によると、昭和二十二年十月合資会社日東歯機製作所が解散し、日東歯科器械工業株式会社が設立せられた際、控訴人は右合資会社に対する六十二万八千三百八十五円五十銭の貸金の弁済に代えて同会社から機械器具等の譲渡を受け、これを右株式会社に三十六万二千八百円で譲渡した事実を認めることができるから、控訴人の右合資会社に対する右債権は、財産税法に定める調査時期の昭和二十一年三月三日現在において、少くとも三十六万二千八百円の価格を有したものと認めたのを不当ということはできない。

控訴人は、控訴人の三和銀行に対する二十五万円の債務は控訴人が右合資会社と共同で振り出した約束手形による債務であり、右会社は当初から全く支払能力がなかつたからこれを控訴人の債務として財産の価格から控除しなければならないと主張し、原審証人永吉柳一郎の証言、控訴人本人の原審及び当審における尋問の結果によると、控訴人と右合資会社共同振出の約束手形が右銀行に差し入れられたことを認めることができるが、成立に争のない乙第一号証と右永吉証人の証言によると、右銀行は控訴人を保証人として右合資会社に貸付をし、その担保として控訴人と右合資会社共同振出の約束手形を受け取つていたもので、右貸金は同会社から同銀行に弁済せられたものである事実を認定することができるから、控訴人の右債務は右調査時期の現況によればとうてい控訴人の財産の価格から控除すべき確実な債務であつたものと認めることはできない。

そうすると被控訴人が控訴人の課税価格を九十九万四千三百七十八円と再更正したのを違法ということはできないから、その取消を求める控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却しなければならない。

原判決中課税価格の更正の取消を求める訴を不適法として却下した理由は当裁判所の見解と異るが結局これを却下したのは正当であり、その他の部分は正当であつて、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担について同法第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 大野美稲 熊野啓五郎 村上喜夫)

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